星になった○○○くん

 

本当は書く事をためらったんだけど、書きます。

 

先月、私の住んでいる千葉市の某マンションで事件が起きてしまった。

 

ノイローゼになった母親が6歳と4歳の子供を刺し殺してしまったのだ。 

 

4歳の子。

 

私にも同じ歳の息子がいる。

 

同じマンション。

 

同じ歳の子供。

 

だから、同じ幼稚園に通っていた子だった。

 

しかも同じ組だった。 

 

ノイローゼになってしまったお母さんとも面識があるし、子供の顔も知ってる。

 

亡くなった○○○くんがかわいそう。

 

子供を殺すなんて許せない。

 

もちろん、そういう感情もあったけれど、一番考えるのは自分の子供の事。

 

とてもとても伝えられない。

 

「おともだちの○○○くんが○○○くんのお母さんに刺し殺されたのよ」なんて。 

 

子供にショックを与えたくない。

 

同じ幼稚園の母親同士で話し合って「○○○くんは遠いところに引っ越した」って

 

説明する事に決めた。

 

息子は、私の説明を息子なりに理解した。 

 

息子は真相を知らない。

 

他の子供たちも。

 

幼稚園の中で、いつも通りに遊んでる。

 

同じ組の子が一人、遠くに引っ越してしまっただけだと思ってる。

 

真相を知っている幼稚園の先生は、ものすごいショックを受けていて 見ている私たちも同情してしまう程だった。 

 

ある日。息子が言った。 

 

「ねえ、○○○くんって星になったんでしょ?」

 

「えっ!?どうして?」 

 

私はドキッとしたけれど、平然を装って聞いた。 

 

「△△ちゃんが言ってた。」 

 

きっと△△ちゃんのお母さんが、△△ちゃんにそう伝えたのだろう。 

 

「そうだよ。○○○くん、星になったんだよ。遠くに行ったんだよ。」 

 

その日は曇っていた。

 

次の日は晴れた日で雲も少なく、夜になると星も見えた。

 

カーテンを開け、空を見上げ、息子が言う。星を見てる。 

 

「○○○くん、あの中のどこにいるんだろうね」 

 

私はやりきれない気持ちになって、息子の後ろから一緒になって星を見ていた。

 

それまでは自分の息子にショックを与えないようにと、 そればかりを考えていたけれど、この時初めて○○○くんの事を思った気がする。

 

星を見上げながら、涙が溢れてきた。

 

それからは、星が見える夜になるたび、息子は○○○くんを探そうとした。 

 

しかし、ある日、息子が言ったのだ。 

 

「ねえ、□□くんがね、公園で○○○くんに会ったんだってー」 

 

私はまたも、平然を装った。 

 

「あら。本当?」

 

「うん。星にお引越しして寂しくなったから遊びに来たのかな?」

 

「そうね。」

 

「□□くんがね、公園で○○○くんに会ったんだよ」 

 

息子は同じ事を繰り返して言った。

 

でも、続けて言った言葉に私はショックを受ける。 

 

「なんかね、泣いてたんだって。」 

 

草木もあり、子供が遊ぶには広い公園。

 

公園の入り口から遠い所に○○○くんが泣いていたと言う。

 

走って近づいていったら、いなくなっていたらしい。

 

□□くんがウソをついたのか、本当に昼の公園で会ったのか。

 

私には分からない。 

 

泣いていた○○○くん。

 

刺されて痛かったでしょう。

 

その相手がおかあさんだなんて、辛かったでしょう。 

 

亡くなった○○○くんが公園にいた事よりも、 私は彼が泣いていた事の方が気になってしまった。

 

こんな事件は起きないで欲しい、もう二度と。