お守り

これは私が学生のころ、友達(Nちゃん)から聞いた実話です。

Nちゃんの小学校から付き合いのある友達、育美ちゃん(仮名)が体験した、本人にとってはすごく辛くて悲しい話。

育美ちゃんは、小学校に上がる前にお父さんを亡くしてしまい、お母さんはその後再婚もせずに働きまくって、育美ちゃんを高校はもちろん、大学にまで入れてくれました。

でも、無理がたたって倒れてしまいました。

それでも、身体が良くなるとまた働きはじめて、そしてまた倒れて・・・

そんなことを繰り返しているうちに、ついに起き上がれない身体になってしまいました。

そして、自分がもう長くないと悟ったお母さんは、お守りを1つ育美ちゃんに手渡し、

「ごめんね育美。ひとりでも頑張るんだよ。

 でも、どうしても辛かったり耐えられなくなったら、このお守りを開けなさい」

と言いました。

しばらくして、お母さんは亡くなってしまいました。

育美ちゃんはお母さんに貰ったお守りを、お風呂に入るとき以外は、肌身離さず持ち歩いていました。

あるとき友達(Nちゃん達)とプールに行ったとき、更衣室で育美ちゃんのお守りの話になり、中を見てみようということになったそうです。

最初は断った育美ちゃんも、お母さんが亡くなってからだいぶ経っていたこともあり、まあいいかと思ってお守りの中をのぞいてみました。

するとそこには、1枚の紙が折り畳んで入っていました。

「なんだこれだけ?」と拍子抜けした育美ちゃんが、その紙を取りだして開いてみると、そこには・・・震えた文字で

『育美、死ね』

と書かれていました。

これってどう思います?

私には間違っているけど、母親の愛のような気がします。

『耐えられないくらい辛いことがあったら、死んでもいいんだよ。お母さんのところへおいで』って感じ。

これを見た育美ちゃんは、そのときは相当ショックだったらしいけど、しばらくすると何事もなかったように明るかったそうです。

そのときは友達がいたし、別に辛いこともなったのでよかったけど、もしホントに辛いときにお守りを開いていたら・・・