お守り

これは私が学生のころ、友達(Nちゃん)から聞いた実話です。

Nちゃんの小学校から付き合いのある友達、育美ちゃん(仮名)が体験した、本人にとってはすごく辛くて悲しい話。

育美ちゃんは、小学校に上がる前にお父さんを亡くしてしまい、お母さんはその後再婚もせずに働きまくって、育美ちゃんを高校はもちろん、大学にまで入れてくれました。

でも、無理がたたって倒れてしまいました。

それでも、身体が良くなるとまた働きはじめて、そしてまた倒れて・・・

そんなことを繰り返しているうちに、ついに起き上がれない身体になってしまいました。

そして、自分がもう長くないと悟ったお母さんは、お守りを1つ育美ちゃんに手渡し、

「ごめんね育美。ひとりでも頑張るんだよ。

 でも、どうしても辛かったり耐えられなくなったら、このお守りを開けなさい」

と言いました。

しばらくして、お母さんは亡くなってしまいました。

育美ちゃんはお母さんに貰ったお守りを、お風呂に入るとき以外は、肌身離さず持ち歩いていました。

あるとき友達(Nちゃん達)とプールに行ったとき、更衣室で育美ちゃんのお守りの話になり、中を見てみようということになったそうです。

最初は断った育美ちゃんも、お母さんが亡くなってからだいぶ経っていたこともあり、まあいいかと思ってお守りの中をのぞいてみました。

するとそこには、1枚の紙が折り畳んで入っていました。

「なんだこれだけ?」と拍子抜けした育美ちゃんが、その紙を取りだして開いてみると、そこには・・・震えた文字で

『育美、死ね』

と書かれていました。

これってどう思います?

私には間違っているけど、母親の愛のような気がします。

『耐えられないくらい辛いことがあったら、死んでもいいんだよ。お母さんのところへおいで』って感じ。

これを見た育美ちゃんは、そのときは相当ショックだったらしいけど、しばらくすると何事もなかったように明るかったそうです。

そのときは友達がいたし、別に辛いこともなったのでよかったけど、もしホントに辛いときにお守りを開いていたら・・・

夜が来るよ

今晩は、都内の大学に通っている山尾と申します。よろしくお願いします。

私、大学の3年生なんですけど、今年の10月にアパートを引っ越したんです。

はい、前のアパートが、道路の拡張工事に引っかかって取り壊されるためです。

そのことは前から言われてたので、8月ころから新しい部屋を探してました。

不動産屋さん回りをしてたら、すごく条件のいいところが一ヶ所あったんです。

前のところよりも大学に近くて、電車を使わずに通えそうな距離で、 しかも家賃も1万円ほど安いという。

それで、現地を見にいったとき、 不躾かと思ったんですが、不動産屋さんに、

「こんな家賃なのは、 なにかわけがあるんですか?」

って、思いきって聞いてみました。

そしたら、不動産屋さんはちょっと困った顔をしましたが、 外に出て、アパートの裏手側に回ったんです。

そこですね、道をはさんで墓地になってたんです。

もちろん高い塀に囲まれてるので、 外からは墓地だとはわからないんですけど。

でも、私はあんまり気にならなかったんですよ。

というのは、空いていた部屋は2階のいちばん端で、お寺の区画は切れてて、窓からはお墓が見えなかったんです。

不動産屋さんは、「所有者からははっきり聞いてはいませんが、こういう事情で他所よりお安いんだと思います」こう話してました。

それで、立ち退きの期限もあったので、そこに決めちゃったんです。

それとですね、今回の話に関係があるんですけど、キッチンのついた一間の部屋の中を見せてもらってるとき、ガス台の上、換気扇があるところの横に、 金属の赤い箱があったんです。

はい、天井から10cmほど下で、 もちろんイスとかに上がらないと手が届かない高さです。

「あれは?」って聞いたら、「あっ、ガス検知器です」という答えで、 たしかに、真ん中に小さなライトが一つ点滅していました。

そのときはなんとなく納得したんですけど、今考えれば赤い色って変ですよね。

で、引っ越しをしました。

荷物が少なかったので、業者には頼まず、大学のサークル仲間で免許を持ってる人が運んでくれたんです。

その日の夜は、お礼に、新しい部屋でピザなんかをとって、少しお酒を飲んだんですけど、一人、「この部屋、なんかなあ」っていう友だちがいて、「何?」って聞いたら、「気を悪くしないでね。ケチをつけてるわけじゃないんだけど、この部屋、暗く感じない?」

じつは、私もそう思ってたんです。

けどそれは、部屋の照明が古くなっているせいだと考えてました。

蛍光灯だったので、新しい大家さんに、LEDとかに変えられないか話してみようと思いました。

それから、1ヶ月は何も起きなかったです。

照明のほうは旧式で、LEDは無理だったんですけど、蛍光管を変えたら明るくなりました。

先月のことです。夜の8時ころでしたか。

バイトから帰って、キッチンで料理してました。

簡単な献立ですけど、生活費節約のために、毎日自炊してたんです。

そしたら、フライパンの油がパチンとはじけて顔にあたり、びっくりして横の壁にドンとぶつかってしまって。

そのとき、ウインウインってサイレンの音がすぐ上から聞こえて、見るとガス検知器のライトの点滅が激しくなってました。

あわてて火を消したんですが、ガスの臭いはしなかったです。

私がぶつかったせいだと思って、見てみようと机からイスをひっぱり出してるうち、音は消えて、点滅も収まったんです。

はい、それから2週間後くらいですね。

その日は遅く、11時ころに部屋に戻りました。

冷蔵庫から飲み物を出してると、携帯が鳴ったんです。

出てみると地元にいる母でした。

「あ、お母さん、どしたの、こんな時間に?」実家は夜が早くて、ふつうはもう寝てる時間なんです。

母はいつもののんびりした声で、 「お父さんの具合が悪くってねえ」 「え?どういうこと?」 変なことを言うなあと思いました。

私の父は4年前に病気で亡くなってて、母は、実家で兄の家族と同居してるんです。

「お父さんてどういうこと?」 そしたら少し沈黙があって、

「・・・そっちは停電してないのかい?」って。

「何言ってるのよお母さん、私のとことそっち、すごく離れてるじゃない。お母さんのほう、停電なの?」

「そうかい、停電じゃないのかい・・・じゃあ、夜が来るよ」そこで電話は切れました。

その途端、 部屋の電気がぱっと消えたんです。

「え、え? ホントに停電?!」

ウワンウワンウワン・・・ガス検知器がまた鳴り出したんです。

赤い光の点滅で、天井がまだらになって見えました。

「ああ、どうしよう?」

暗い中をキッチンまで行きましたが、もちろんガスはついてないです。

まずこれを止めなきゃと思ったんですが、まごまごしてるうちに音と光が消え、真っ暗闇になったんです。

窓のカーテンを開けてみました。

下は道なので、街灯とかの光が見えるはずなんですが、それもなくて、この地域一帯が停電なんだと思いました。

でも、地震があったわけでも、台風でもないのに。

とにかく暗くてどうにもならず、手探りで机の引き出しから懐中電灯を出したんです。

スイッチを入れると、一瞬だけつきましたが、すぐに消えて、また真っ暗に。

ああ、こんなときに電池切れ。

玄関のドアを開けて外の廊下に出てみました。そしたらやっぱり街全体が真っ暗で。

「そうだ、隣はどうしてるんだろう」はい、私の部屋は端なんですけど、右隣の人はあいさつをして知っていて、私と同じ大学生だったんです。

インターホンを押しましたが反応ありません。

ああ、停電でこれも切れてるんだと考えて、ドアをドンドンとノックしました。

そしたら、ドアが少し開いて、「誰?」という声がしたので、「あたし、隣の山尾」そう言うと、チェーンロックを外す音がしてドアが開きました。

「あ、すみません、 急に停電になったので、何かわかることないのかと思って」

「入って」中はぼうっとオレンジ色の明かりで、部屋のテレビ台の上にロウソクが立ててあったんです。

「あ、準備いいですね。うちは懐中電灯もつかなくて。どうして停電になってるかわかりますか?」

「・・・夜が来たから」

「え? どういうことです?」

「ほら、こっち来てみて」

隣の人は、窓に寄ってカーテンを開けました。

外をのぞくと、 私のとこからは見えない塀の中のお墓が青白く光ってて、たくさんの人がいるように思ったんです。

「え、あれは?」

「死んだ人が少し出てきてるの。夜だから」

「ええ?」

ここで急にすごく怖くなったんです。ロウソクの光に照らされた顔が、別人のように思えてきて。

「私、戻ります」そう言って、逃げるようにして部屋に戻ってきました。

でも、相変わらず真っ暗で。

また、携帯が鳴ったんです。番号は実家から。

おそるおそる出てみると、 やはり母でした。

「お母さん、こっちも停電、これ、どうなってるのよ?!」

「だから、夜が来たんだって。もうすぐお父さんがそっちへ着くよ」

私は携帯を放り出し、部屋の鍵をかけてベッドに飛び込みました。

布団をかぶっていると、ドンドン、ドンドン、ドアをノックする音が聞こえ、

それはドカンドカンと蹴りつける音にかわりました。

でも、私はずっと布団か出ず、そのうちに音は聞こえなくなり、眠ってしまったんです。

目を覚ますと朝の気配がしました。はい、外が明るくなってたんです。

時間は9時を過ぎてましたが、その日、大学の授業は午後からでした。

まず携帯を見ました。でも、実家の母からの着信はなかったんです。

あと、電気もつきました。

すごく怖かったんですが、隣の部屋の前に行ってインターホンを押すと、隣の人が出てきて、「どうしたの?」と聞くので、「昨日、停電ありましたか?」「いや、気がつかなかったけど」こんなやりとりになったんです。

この調子だと、私が部屋に入ったことも否定されるだろうと考えて、言い出しませんでした。

・・・ここまでくると、全部が夢だったって思いますよね。

私は昨日、帰ってきてすぐに寝て、停電する夢を見てた。

そうとしか解釈しようがないです。

念のために、母に電話してみました。

母はすぐ出て「これからパートに行くんだけど、どしたの?」

「昨日の夜、電話した?」

「いや、してない」

・・・あとは、あのガス検知器だけです。

イスに上がって金属の箱を見たら、 4隅がネジ止めされてたんです。

そのときはどうにもならず、大学の帰りにねじ回しを買ってきて、箱を開けました。

中は真ん中に一つだけ、ブレーカーのような大きなスイッチがあって、上にあがってました。

下側に白い紙が貼ってあり、そこに筆字で「夜」ってあったんです。

大家さんに連絡したんですが不在で、不動産屋にかけました。

担当者が出たので解約したいって話すと、理由を聞いてきたから、一言だけ、「ガス検知器の中を見ました」そう言ったら、

「・・・ああ、わかりました。解約は了承します。・・・次のお部屋はお決まりですか?」

頭にきたので電話を切り、誰かに話を聞いてもらいたくてここに来たんです。

セールスで行った会社

口下手だからあんまり怖くないかも知らんけど、こないだ俺が体験した、すんごいぞっとした話。

俺、事務用品のセールスやってんのね。

中小企業に勤めてる社会人なら経験あると思うんだけど、雑居ビルみたいなところに入ってる会社に「事務用品会社のものなんですが」っつって注文取るやつ。

まあ大概は結構ですって言われて門前払い食うんだけど、その日行ったある会社は様子が違ったんだ。

ドアをノックしてからあけて、

「こんにちは、突然失礼いたします、○○という事務用品の店なんですが」

っていういつもどおりのセールストークして、社内の反応伺ってたら、応接用なんだか作業用なんだか分からない一角に座ってた人が物凄い勢いで立ち上がって、すんごいにこやかに椅子を勧めてきてくれんの。

この時点ではちょっと違和感があったくらいで、むしろ「あ、当たりを引いたかな、ラッキー」くらいに思ってたんだ。

んで、「事務用品のご担当者の方はいらっしゃいますか」って聞いたら、「今ちょっと外出しておりますので、すぐに呼んでまいります」って言われて、またしても物凄い勢いで外に飛び出して行くのさ。

何もそこまでせんでも、とは思ったけど、これなら注文までこぎつけられるかも知れないと考えて、おとなしく座って待つことにしたんだ。

今思えば、この時点でとっとと帰ってりゃ良かったんだけどな。

待ってる間、手持ち無沙汰だから何やってる会社なのかと思って他の人たちのことを見てたんだけど、さっぱり分かんなかった。

っつーか、押しかけていって話が弾まない限りは基本的に分かんないんだけどね。

ただ、明らかに様子がおかしいんだ。

ちょっと雑然とした感じの室内にテーブルの島が2つあって、1つの島に2人ずつ、向かい合うように人が座ってたんだけど、全員が全員、モニタとにらめっこしながらぶつぶつぶつぶつ独り言いってんのね。

それでもたかが独り言だし、とりあえずおとなしくしてたんだけど、声が少しずつでかくなってきてさ。

「○○は××じゃない(←専門用語っぽくて聞き取れなかった)」とか「畜生、畜生、畜生」とか「何でこんなことになってんだ」とか。

俺もだんだん怖くなってきて、独り言を聞かないようにしながら、自分が座ってる机の上に置かれてた湯呑みをひたすら凝視してたんだ。

で、そこでふと、その湯呑みにお茶が半分くらいしか入ってないのが見えちゃって。

よくよく考えたら、俺はお茶なんか出されてないから、あれは多分俺が来るまえに出されてたものだと思うんだけど、俺が来る前に座ってたのは、さっき出ていった人なんだよな。

でもまあ、こっちは基本的に招かれざる客だし、別にお茶を出して欲しいわけでもないから、そのまま黙ってた。

そしたらその瞬間、

「ああああああああヴぁああああああうぼあうぇあああああああ!!!!!」

みたいなすんごい叫びが聞こえて、びびってそっち見たら、一番奥に座ってたおっさんが、気がふれたんじゃないかってくらい凄い顔しながらばりばり喉をかきむしって、叫んでんの。

んで、あまりの展開に俺は硬直しちゃって、ひたすらそのおっさんのシャウトシーンを凝視してたんだけど、10秒かそこらしたら、ぱたっとそれがやんで、おっさん、急に無表情になんの。

手の動きもぴたっと止まってさ。

さらにはいつの間にか他の人の独り言もとまってて、シーンとしてんの。

それで、流石にこりゃやばいと思って席を立とうとするんだけど、頭に体がついていかないっていうか、妙に固まって動けずにいたら、そのおっさんが、すぅっとこっちに顔向けて。

俺、おっさんと目があっちゃって。

その目がもう、なんつーか、死んだ魚のような目っていうか、暗くにごって何も映し出してない雰囲気がこっちまで漂ってきてて、背中を冷や汗がつーっと垂れてくのを感じて、でも動けなくて。

(クーラーのきいた部屋だったから汗が出るような温度じゃないんだが)

そしたら今度は他の人たちも次々にこっちにゆっくりと顔向けてきて、やっぱり、全員不気味すぎるくらい無表情。

もうその瞬間、緊張の糸が切れて、「しししし失礼します!」って叫んでその部屋を飛び出したんだけど、外に出たら、気温の差なのかなんなのか、急に汗がだくだく出て来て。心臓もバクバク言ってて。

それ以降その会社にもそのビルにも行ってないから、あれが一体何だったのかは未だに分かんないし、俺を出迎えてくれた人の正体も不明なまま。

つーか、担当者がきたらすぐ渡そうと思って机の上に俺の名刺を出しっぱにしてきちゃったのが怖い。

今んとこ電話はないけど。

以上、霊魂とかそういうのじゃないけど、俺が遭遇した恐怖体験でした。

あやこさんの木

私が通っていた小学校には『あやこさんの木』というのがあった。

なんという種類かは分からないが、幹が太く立派な木だ。

なぜあやこさんの木というのかは分からない。

みんなそう呼んでいたが、由来は誰も知らない。

そんな名前の木だから、あやこさんの木には色々な怪談があった。

あやこさんの木の下にはあやこさんが埋められているとか、あやこさんが首吊りをしたとか、夜中にあやこさんが枝に座っていたとか・・・。

そのあやこさんの木が切られることになった。

整地された校庭には不釣合いな木だし、100メートル走のスタート位置のすぐ後ろに立っていて、体育の時間や運動会の時はかなり邪魔になっていた。

あやこさんの木が切られる日は、危ないから休み時間に校庭で遊ぶのは禁止され、体育の授業も体育館で行われることになった。

授業中にチェンソーの音が聞こえ、そのチェンソーの音が木を切っている音に変わった瞬間、

「ギャアアアアア!!」

という凄まじい叫び声が聞こえた。

男なのか女なのかも分からないほど歪んだ声。

どこから聞こえているのかも分からない。

教室から聞こえてくるようにも思えるし、遠くから聞こえてくるようにも思える。

先生はすぐに授業を中断して廊下に出て、他の先生と話し合いを始めた。

その間もずっと叫び声は続いている。

数分が経って、校庭に避難することになった。

避難している最中も、叫び声は聞こえる。

叫び声は学校中に響いていて、やはりどこから聞こえているのか分からない。

校庭に避難してからも、校舎の中から叫び声が聞こえる。

しばらくしてあやこさんの木が切り倒されると、叫び声は止んだ。

その日は何も持たずにそのまま集団下校をすることに。

夜になって保護者説明会があり、次の日は休校ということになった。

保護者には、「誰かが放送室に侵入してイタズラをした」と説明したらしい。

翌日に友達と学校へ行ってみたが、校門は閉じられていて中に入れない。

道路から校庭が見えるのであやこさんの木を見てみると、大人が何人かいて、切り株になったあやこさんの木の周りを白い紐で囲っている。

どうやら御祓いをやっているような感じだ。

その日の夜、スイミングスクールの帰りに自転車で学校の前を通り、何気なく校庭のあやこさんの木を見ると、あやこさんの木の切り株に女の子が座っているのが見えた。

うちの小学校は一箇所だけ夜間照明があり、それがあやこさんの木のすぐそばにある。

だから、遠いが結構はっきりと見える。

間違いなく女の子が切り株の上で体育座りをしている。

夜の10時過ぎだ。

こんな時間に女の子があやこさんの木の切り株に座っている。

あやこさんだ。

間違いなくあやこさんだ。

恐怖もあったが、明日はこの話題で持ちきりになるだろうという嬉しさの方が強かった。

早く家に帰ろう、そう思い自転車をこぎ出すと、市内放送が流れた。

こんな時間に市内放送が流れるなんて滅多にない。

自転車を止めて聞いていると、どうやら小学生の女の子が行方不明になっているらしい。

小学生の女の子?

さっきの切り株に座っていた女の子が頭をよぎった。

あの子かな?

でもなんであんなところに座っているんだろう?

正直かなり怖かったが、女の子を見つければヒーローになれる。

その誘惑に勝てず、一人で校庭に忍び込むことにした。

校門の前に自転車を止めて、校門をよじ登って飛び降りた。

その瞬間にゾクッという悪寒が走った。

ただでさえ夜の学校は怖いのに、その上あやこさんの木の切り株の上に女の子が座っている。

どうしようか迷った。

一度家に帰って親と一緒に来ようか?

でもやはり一人で見つけたかった。

校門からあやこさんの木までは100メートルちょっとある。

ビクビクしながらあやこさんの木に近づいていった。

女の子は顔を伏せて切り株の上で体育座りをしている。

異常な光景を目の当たりにして、声をかけることが出来なかった。

ここまで来て引き返そうかとも思った。

それほど目の前の女の子が怖かった。

でも足が動かない。

1分ほど黙って女の子の前に立っていたが、意を決して「どうしたの?」と声をかけた。

女の子は顔を伏せたまま「・・・・・たの?」と言ったが、ボソボソと話してよく聞こえない。

「え?」と聞き返すと、「どうして切ったの?」と聞いてきた。

あやこさんの木のことかなと思ったが、僕にどうしてと言われても分からない。

答えられずにいると、女の子はゆっくりと顔を上げて僕を見つめた。

普通の女の子だ。

だが、女の子の顔が怒りの表情に変わっていく。

立ち上がって切り株から降り、近づいてきた。

逃げ出したかったが、やはり恐怖で足が動かない。

女の子は僕の目の前で止まり、「どうしてだー!!」と叫んだ。

次の瞬間、「ギャアアアアア!!」というあの歪んだ声が校舎の中から聞こえてきた。

校舎の窓は全て閉めてあったが、声が漏れて聞こえてくる。

あまりのことに僕は女の子を突き飛ばし、全速力で逃げた。

校門まで遠い。

振り返りたい衝動に駆られたが、絶対に振り返ってはいけない気がして、とにかく全力で走った。

走っている最中も、校舎の中からあの声が聞こえる。

校門の前にパトカーが止まっているのが見えた。

助かった。

涙が出そうなほど嬉しかった。

「助けて!」と夢中で叫んだ。

警官が「どうした?何があった?」と聞いてくるも、泣いて答えられない。

何人かが校庭に入っていき、女の子を抱えて出てきた。

パトカーの中で落ち着かせてもらって、やっと話せるようになり、ありのままを話した。

信じてくれたかどうかは分からないが、校庭に入った警官は校舎から聞こえてきたあの声を聞いてるはずだ。

あの女の子はやはり行方不明になっていた女の子だったようで、母親が泣きながら女の子を抱きしめている。

僕は夜も遅かったので親に連絡をして呼んでもらい、一緒に家へ帰った。

翌日は土曜日だったこともあり学校を休むことにしたが、

「また御祓いをするから一緒にやってもらった方がいいんじゃないか」

と担任に言われ、昼過ぎに学校へ行くことにした。

あの女の子も同じ小学校の下級生で、御祓いをしてもらうために親と一緒に学校へ来ていた。

少し話をしたが、僕のことを覚えていないどころか、昨日の記憶がほとんど無いらしい。

校長も教頭も含めた学校の先生がほぼ全員一緒に御祓いを受けた。

なんだか葉っぱのたくさん付いた樹の枝みたいなもので頭をバサバサやられたりしたのを覚えている。

御祓いが効いたのか、それからは何も起こらなくなった。

先生達にあやこさんの木について聞いてみたが、誰も何も知らないという。

昔からある木だから何かが宿っていたのかも知れない、と。

今でもあの小学校の前を通る時はゾクッとする。

見ない方が良いと分かってはいるが、あの切り株を見てしまう。

もう何の変哲もないただの切り株になっていることを願う。

山小屋

自分の山仲間の話です。

神奈川県にある、山奥の山小屋に彼は泊まっていた。

山小屋には、彼の他に2人の男性。夏にしては異様にすくない。

風と木々のざわめきしか聞こえない山小屋で、この3人の男性達は夜遅くまでランタンに灯を灯し、

高山植物の話や、今まで登った山について語り合っていた。

夜中の1時ぐらいまでたっただろうか?

一人が、「外から声がしないか?」と突然言った。

二人は言葉を止め耳を傾けた。

「ううっ助けて・・・助けてくれ・・・」

外から声が聞こえる。

こんな夜中に何故?と思いつつも、彼等は外へと飛び出した。

そこには、初老の男性が胸を掴み、のた打ち回っていた。

彼はとにかく駈けより、「大丈夫か?」と声をかける。

他の二人の一人が、所持していた携帯の無線機でSOSを送ろうとした。

だが、何故か繋がらない。

しょうがなく、簡易救急箱を持ってくる。

初老の男性は、苦しみ続けている。

そして、動かなくなった。

彼は、とりあえず脈を計ろうと、腕に触れた。

だが、触ったとたん、すぐに手を引っ込めてしまった。

何故なら、暖かくもなく冷たくもない。

まるで、物質のようなものに触れた様だったからだ。

突然、その初老の男の手がのびた。

さっき引っ込めた手を強く握る様に、その男は苦しみの顔と言葉を放った

「俺は苦しかったんだ。苦しくって、ここまできたんだ。

 けれど、誰も居なかった。

 小屋の前まで来たのに、誰も居なかったんだ・・・・」

その初老の男の目からは、涙が流れていた。

しばらく手を離さずに、男は呆然としている3人の登山者達を見回した。

そして溶けるかのように、地面に沈んでいった。

3人はしばらく、無言で立ち尽くしていた。

そのうち一人が、「もう遅いから寝よう・・・・」

そう言って3人は小屋へ入り、何も言わず眠りについた・・・・

その日の朝。

山小屋を出た3人は、夜中に起きた山小屋の前に行き、

あの初老の男が、この地から帰れる様に・・・と祈り、帰路についた。

 

交番あてがわれた時の話

んじゃ昔出ると言われる交番あてがわれた時の話でもしようかね

移動の時は前任者と引継ぎをするのはどこの業界でも一緒だとおもうんだけど、うちの組織でも当然あるんだ。

時間帯ごとの人通りの推移やよく事案が起こる重要警戒地域

ガラの悪い団地や池沼の家、協力者や御用達のコンビニや金融機関や俗に言う『狩場』なんかは勿論、交番内の備品の位置なんかは同じ交番でも結構違うしね。

それで、前任者のおっちゃんから一通り引継ぎを受けて、交番内をグルーっと眺めたらおかしなものが眼に入ったんだ。

交番には珍しくやたらと本格的なソファーベッドが事務室に置かれてた。

「ずいぶん高そうなもの置かれてますねw住民からの寄付ですか?」

「いやこれは係員でお金出し合って買ったんだよwこの交番出るから皆仮眠部屋に近寄らないんだよねw」

質問自体半分冗談で言ったものだったから回答も冗談なのだと思ってた。

k察って結構ゲンを担ぐというか、オカルトやジンクスを信じてる人が多いんですよ。

・「暇ですねー」というと立て続けに事案が起こる

・刑事は夜食にカツどんを食べない(逮捕事案が起きるから)

なんかはタブーでしたね。

そんな環境だったから僕もおっちゃんの話をそのまま流しちゃいました。

そうそう簡単に交番の立地を先にお話しておきますね。

場所はとある海沿いの町で、その中でも僕の交番は10mも行けば波止場に立てる大雨の日には不安な場所でした。

港と工場が主な、夜になると釣り人とトラックしか音を立てるものがいなくなるなんとも寂しい場所にあります。

僕はその交番で10ヶ月の間に実に4回の『体験』をしました。

書きながらなのでローペースですがまったりお待ちください

72 :本当にあった怖い名無し:2011/05/26(木) 02:55:40.03 ID:3QwW7Qbr0

まず最初に起きたのは勝手に開くドア。定番といえば定番ですね

例のソファーベッドですが、僕は使いませんでした。

周りに上司や同僚がいるときは、その人たちの手前前に書いたようなジンクス系のルールは守っていましたが、幸い一人交番でしたし、ただでさえ短い仮眠なんだからチャントした布団で寝たいって思ったんですよね。

仮眠室は2階です。

事務室の横に狭い上に電灯が切れてる階段がありまして。そこを上がると靴を脱ぐスペースがあり、扉を開ければ6条くらいの畳敷きの部屋と布団があります。

ん出その扉、眼を話すとすぐ開くんですようっとおしいことに。

寝て起きると開いてる。寝ようと上行くと開いてる。警邏出て戻ると、書類かいててトイレ行こうとしてふと見上げると、開いてる

〆ても〆ても〆ても〆ても気が付くと開いてる。

そのくせ見張ってるとピクリともしない。

酷い時なんて一回閉めて階段下りて振り返ったら開いてた

もともと「幽霊()池沼の方がよっぽどか警戒しなきゃあかんでしょwwww」って思ってた僕ですからこれくらいのことじゃビビリません。

腹が立って扉の前に大盾立てかけてやりました。開けたらガシャンです

「どんだけ仮眠室に入りたいんだよこいつは!」って思っていましたね

気分は教室の扉に黒板消しはさんだ時のあれですね。wktkしながら書類整理していました。

時間がたって、何時くらいでしょうかね。仮眠は取る前でしたから深夜の3時より前だったとは思います。

・・・・・・・・・・・ガリ

って聞こえたんですよ。大盾がずる時の音です。

待ち望んでたとはいえいざ起こってしますとどうすればいいかわからない

それでもお仕事がお仕事ですから体はそういう時反射で動くんでしょうね。頭真っ白のまま足だけはスムーズに階段に移動しました。

ノブをつかんだ手がゆっくりと扉を閉める瞬間を見ました。

電機の付かない階段の暗闇で、手首から先だけが、しまっていく扉の間で白く浮かび上がっていました。

なんでこのときだけドア閉めんの?とか今思うと変なんだけど、とりあえずその時は顔が( ゚д゚ )って状態で固まってた。

とりあえず分かったことは二つ、一つは前任者は冗談で言ったんじゃなかったこと、

仮眠室に入ろうとしてたんじゃなくて、既に部屋の中にいたって事。

その日から僕もソファーを使って寝るようになりました。

 

見えない怪物に噛みつかれる

1951年 5月 フィリピンのマニラ


ある裏通りを巡回していた警官はひとりの女性を見つける。


その女性の名はクラリータ。当時18歳。
クラリータは必死の形相で警官に「助けて下さい!誰かが私に噛みついてくるんです」と、助けを求めた。


警官が噛みついてくる人の特徴を聞いたが、彼女は身長も顔も服装も分からないと言う。


警官は、クラリータを麻薬中毒患者だと判断し、警察署へ連行した。


取り調べの最中、クラリータは
「ほら!またあそこにいるわ!黒い何かが私に噛み付こうと襲ってくる!助けてー」
と叫び暴れ始めた。


叫んだ後、彼女は床に倒れ込んだ。
そして警官が見ている前で、肩や腕などから噛み傷が現れ始めたのだ。


その傷からは血が滲み出ており、すぐに警察医が呼ばれた。
警察医の調べで、彼女の体には10か所以上の噛み傷があったと。


警官や警察医は最初は全く信じなかったが、さすがにこの光景を見ては「狂言や芝居ではない」と信じざる得なかった。


その晩、クラリータは警察署に泊まることに。
翌朝 また彼女が悲鳴を上げた。


「またあの怪物が噛みついてくるわー」


と叫びながら逃げ惑うクラリータを警官たちが怯えながらも取り押さえた。


そしてまたクラリータの体にはいくつもの傷が現れ、首筋からは血が滲み始めた。


彼女は恐怖と痛さのあまりに気を失った。
一流の警察医が呼ばれ、クラリータを調査。


全身いたる所にある傷はまぎれもなく何かに噛まれた傷跡だったという。


警察署の独房に隔離されたクラリータ。
この怪物はまたしても彼女を襲ってきた。


「また黒い怪物が入ってきた」


クラリータの叫び声を聞いて警官や警察医などが駆けつけた。


今度も、全員が見ている目の前でクラリータの喉に歯形が食い込み血が流れた。


署長がクラリータに噛みついているであろう、目に見えない怪物を追い払おうとしたが全く手応えがなく、見えない怪物の攻撃がおさまるまで5分くらいあった。


そして、これを最後にクラリータが見えない怪物に噛みつかれることは無くなったのだ。


その後、クラリータは精神病院に半年ほど入院して何とか全快したものの、あの時の恐怖や心の傷が癒えることはなかった。


クラリータが見た「黒い怪物」とは一体何だったのか。


この事件はフィリピン・マニラ警察署の報告書に、特殊事件簿No.108号として記載されている。